月刊アフタヌーンに出張掲載、『&sofa』(アフタヌーンのWeb漫画サイト)に連載される、未知な未来に向けて歩き出そうとする青春漫画。作者は『東京人魚』を描いた新人漫画家、泥ノ田 犬彦。
『君と宇宙を歩くために』のあらすじ
不良高校生の小林大和は「俺はバカだから」と授業を真面目に受けず、物覚えの悪さからアルバイトを始めては辞め、始めては辞めを繰り返す日々をおくっていた。そこに宇野啓介が転校してくる。
宇野は小林の前の席になり、小林は宇野の行動が気にせずとも目に入ってしまう。小林は宇野の『人とは違う行動』が気になっていた。その日、小林は宇野と帰りが一緒になり、転校してきたばかりで道がわからない宇野を送っていくことになった。それがきっかけで二人は知り合っていく。
そして小林は、宇野が臨機応変に動くのが苦手なので、ノートに普段の生活の中での色々な手順を書いて『人とは違う行動』をとらないようにしていた事を知る。
宇野「わからないことがある時は一人で宇宙に浮いてるみたいです。でも僕は宇宙を歩きたい!」
宇野が宇宙を安心して歩けるようになるためのテザー(命綱)が、色々な手順が書かれたノートだった。それを知った小林は、人と同じように出来るためにアルバイトの仕事の手順を作成することを始めてみた。物忘れが酷いからと諦めていた小林だったが、バイト仲間に教えてもらいながらメモを作ることで仕事が徐々に出来るようになり、バイト仲間達に認められるようになっていく。小林はバイト仲間から認められ、毎日が楽しくなってくる。そこで小林は気付く、自分も宇野と一緒で宇宙に浮いていて歩き方を知らなかったのだ、と。
宇宙では
相手に激しくぶつかれば
遠くに飛んでいってしまう
宇野と小林の二人が出会い、友達になって変わっていく物語。自己啓発的でそこまで珍しい話でもないかも知れないが、話の流れが自然で上手くまとまっている。転校生の宇野って変な奴だなから、小林の悩みと宇野の悩みが明かされて、この二人の悩みって一緒じゃないの?となり、朔の横槍が入って荒れるが、最後は雨降って地固まるで終わる。90ページにかけての小林の心境の変化、宇野のテザーがノートから小林になる変化、起承転結の流れが自然で上手くて心地よい。
そして主人公達が高校生というのも設定が上手く嵌っている。両親という地球に守られて生きてきて、そろそろ未知の宇宙に飛び出そうかという年齢設定。これが絶妙。
面白いのは1話では小林だけでなく親友の朔も変化の予兆を見せているところ。親友の小林のノートを捨てようとするなんて酷いやつだと思わせておいて、実は宇野と出会って変わっていく小林を見て寂しかったからという理由があった。ただの乱暴者、デリカシーがない奴というわけではなかった。ノートを捨てようとするのは酷いと思うが…そこまで追い詰められていたんだろう。
悪そうな顔! ここまで読んだだけだと1話だけの使い捨ての悪者キャラかと思った。そして朔が小林と話し合うことで、小林が離れていくことが寂しかったという事を言えなかった、朔も宇宙を漂っていたんだと気付かされる。でも宇宙では激しくぶつかれば相手は遠くに飛んでいってしまうわけで、小林も朔から離れかけそうになっていた。しかし小林に本音を話して離れずに済んだ。
というように1話目はよく出来ていたが、今後の連載になっても上手くいくかどうか。この漫画は未知の宇宙である、連載に向かって歩き出した。