新年の太平市。
洋子は街で小さい頃に会った組織の人間の山岡を見かけた。
武器商人は山岡となるべく出会わないようにしていた。
あらすじ
洋子の家
バスルームで頭を洗う洋子。
何か気になり、バスルームの扉を開けて部屋の中を伺う。
その後――――
風呂からあがった洋子はクシャミをしていた。
佐藤「風邪か・・・・」
洋子「でしょうねぇ――― 40分もお風呂にいたからね~」
佐藤「ひょっとして山岡ってのが怖いのか―――?」
洋子「怖くないわよ! 警戒してるの アタシは~。組織の者がなぜか近くをウロウロしてるのよ―――」
佐藤「実は俺も年末に気になる男を見た―――」
二郎の事を話す佐藤。
洋子「それは山岡じゃないわ――― なんか凄く嫌な予感がするんですけどォ―――」
洋子「今日は泊まっていいよ―――」
佐藤が家に帰るのを引き留めようとする洋子。
砂川経営のキャバクラ
店には誰もおらず、武器商人が一人、ソファーで寝転がっていた。
武器商人は昔の事を思い出していた・・・・
武器商人の回想
武器商人は殺し屋をしていて、マンションの部屋の中で仕事の真っ最中だった。
ターゲットを始末した武器商人だったが、いつのまにか部屋に男が侵入していた。
男に不意を疲れ、壁に押さえつけられる武器商人。
武器商人「な・・・何者だ。おまえ―――・・・・」
男「見ての通り同業だよ――― 少しだけ違うのは―――俺は殺し屋の殺し屋なもんでぇ――― その両眼でよく見ておけ――― 俺の顔が今日からトラウマになる―――!」
男は武器商人の左目に傷をつけた。
男「それから――― 表の見張りの二人・・・もう殺っちゃったから―――・・・・ 逃走用の車は―――・・・」
外で爆発が起こる。
男「今、爆発した! いいタイミングだ。この国の殺しのマーケットはウチが仕切る――― ま―――そういう事だ―――・・・」
男「さっきの爆発で今夜は警察やら機動隊やら騒がしくなるぞ。今夜はここで休んでいこう! そのほうが安全だ―――・・・・ おまえは生かしといてやる―――! これからの事を打ち合わせしようじゃねーか」
武器商人は眼を抑えて壁に寄りかかって立ったまま。
イスに座った男「まあ座れよ~。おまえが立ってたら―――俺がエラそうにしてるみてえだろ」
ハッと目を覚ます武器商人。
山岡の姿を思い浮かべていた。
眼を潰した男は山岡だった・・・・。
感想
過去のトラウマを警戒する洋子・・・・。
鈴木相手には脅威を感じなくて警戒しなかったけど、やはり組織の人間は気になるか―――。さらにボスと対等に話していた男だからなぁ―――。
40分も風呂に入ったり、佐藤をこれだけ引き止めるのはそうとう警戒しているなぁ―――。
ボスと対等に話す男が、真黒組を通さずに近所をウロウロしている―――。さらに洋子に気づかれると知っていながらも、洋子の目の前に姿を表した―――。目的が分からないのは怖いなぁ―――。洋子は記憶力がいいから、過去に一度だけ見ただけの山岡に恐怖を感じたトラウマも忘れられなくて、恐怖が倍増しているんだろうなぁ―――。そして佐藤の強さを実際に手合わせして知った後だから、それ以上の強さを持っていそうな山岡の事はなおさら怖い―――。ミサキに痴漢した二人を探していたが、それは後回しになりそうだなぁ―――。ミサキの軽いトラウマよりも、自分の小さい頃のトラウマをどうするか―――。ボスと連絡とれたりは出来ないのか―――? LINEみたいなのでボスからメッセージが来ていた事はあったが・・・・。
ボスに頼る―――? それとも頼らずに洋子側から動いたりするんだろうか―――?
山岡にトラウマを植え付けられなかったボス・・・・。
ボスは小島とのイザコザに佐藤が巻き込まれた時には蛯原のところに顔を出したが・・・・今度も来る―――? 山岡が暴走しだしたら、組織を守るために山岡を消しそうだけど・・・・。恐怖心がない山岡―――そんな山岡を力や恐怖でトラウマを植え付けて制御することが出来ないの事はボスは重々承知で、暴走することを警戒しているだろうが・・・・。
そもそも真黒組のクーデターを黙って見ているのか―――? 直で仕事を受けるほどの契約している客なんだから、守ってもよさそうだけど・・・・。ファブルは攻撃する側専門か―――? 誰かを守りながら戦うっていうのは不利になるし(実際、ヒナコを守って佐藤は怪我をした)―――。それとも組長か若頭が変わっても契約金をくれればそれでいいっていうスタンスか―――? 情に左右されて組織が崩壊しないようにってことも考えてそうだな―――。それだと佐藤に手助けしない可能性もあるが・・・・。
情を重視して、佐藤を”ふつう”にするために巻き込まれないように動くのか―――組織を守るために山岡を消しに来るのか―――。ボスはどうするんだ―――?
トラウマはなさそうな佐藤・・・・。
佐藤は小さい頃からボスに訓練されていたけど・・・・トラウマはないのか―――? ヒナコの事には罪悪感は感じていたみたいだけど・・・・。 小さい頃に森に一人で置いていかれた時の事も、虫などの生き物の声や川の流れの音や風の音の事を『森のジャズ』と言っていたし、夜に星空を見上げた事も楽しんでいた様子―――それにもし森に置いていかれた事がトラウマだったら山ごもりなんてしないだろうし・・・・。ボスと会話をしていた時も、佐藤がボスを恐れている様子はない―――。訓練を受けている時には、ボスとも手合わせをしたと思うけど、その時にボコボコにされただろうけど、それでも恐怖を感じなかったのか―――? 感情で動かないように、感情を殺す訓練もしたのか―――? それとも佐藤の天性の才能の一部なのか―――?
佐藤は二郎を見かけた時に”ふつう”の奴ではないと分かっていながら何もしてなさそうだけど、佐藤は負けないという自信があるのか―――? ボスと対等に話す山岡が彷徨いていても警戒していない―――。普段から隙がないように行動しているから、特別に何かするってことでもないのか―――?
トラウマを消せない武器商人・・・・。
武器商人も昔は殺し屋をやっていたのか―――。見張り役としての仲間はいたが、複数のターゲットを始末したのは武器商人一人で実行している―――。中々の腕前―――。
山岡にはやられてしまったが・・・・。武器商人も目暗ませされたとはいえ、狭い部屋なんだから撃てばいいのになぁ―――。そんな一瞬も無かったか―――? 一瞬で間を詰められたのか―――?
寝ている時に銃を握っているのは山岡が現れて過去のトラウマを思い出したからか―――?
武器商人は片目を失ったから裏方にまわったんだろうか―――? 山岡が指に嵌めたナイフで武器商人の腕を刺しているが、それで腕を痛めた―――? それともその後の『これからの事の打ち合わせ』で、武器をバラ撒いて街を物騒にして、組織が必要になるように山岡が仕向たんだろうか―――?
トラウマを植え付ける山岡・・・・。
そんな武器商人に気づかれずに窓から侵入できる山岡―――。
使っているのはペンライト型の仕込み銃―――。ボスが元自衛隊の男に「山岡から仕込み銃も教わったか―――?」と言っていたが、山岡は仕事の時には仕込み銃をよく使うのか―――? ライトで目暗ませをしたり、銃としても使える―――。持ち運びに便利だけど、肝心の弾丸は一発しか撃てなさそうだし、威力も低そうだなぁ―――。それを武器にするぐらいだからそれだけ自分自身の腕前に自信があるのか―――? 武器は特別だけれども、威力は期待できない―――あくまでも自分の身体がスペシャルということか―――。
太平市に来て武器商人に言った言葉「おまえが立ってたら俺がエラそうにしてるみたいだろ」は―――
昔に言った言葉だったのか―――
これは山岡のクセではなくて、昔を思い出させるためにわざと同じことを言った―――? 二郎を佐藤兄妹に手を出させようと焚き付けた山岡のことだから、わざとトラウマを思い出させることを言ったんだろうなぁ―――。
トラウマを植え付ける組織・・・・。
山岡が自分のことを『殺し屋の殺し屋』と言っていた―――。
ファブルは「人から恨まれるような事してるといつかファブルが来る」ということからそう呼ばれていて恐れられている―――。まさに殺し屋の殺し屋―――。
武器商人を生かしておいたのは、使えると思ったから―――? でも使うなら片目を潰すのは遠近感が狂うからやるはずがない―――。組織があると知らしめるため―――? 武器商人に「この国の殺しのマーケットはウチが仕切る」と宣言しているから、組織はまだ出来たての頃だろう―――。組織を知らしめるためにわざと殺し屋にトラウマを植え付けて、殺し屋にトラウマを負わせるほどの凄腕がいると知らしめることが出来る―――。そして大口と契約出来て仕切ることができるようになる―――。武器商人との出来事は、これを狙った動きの一つか―――。
実際、ファブルであるにもかかわらず洋子が怯えている―――。その効果はバツグン―――。ファブルでもない者だとさらに恐怖だろう―――。そうやって組織は手を広げて大きくなっていったのか―――?
「人から恨まれるような事してるといつかファブルが来る」と言われるファブル―――。じゃあ、ファブル自身が恨まれるようなことをしていると誰が来るんだ―――? 山岡が人を操って感動巨編にしようとしている中、誰が懲らしめに来るんだろうか―――? 恐怖心がないからトラウマを負わせて止めることは出来ないし、始末されるんだろうが・・・・。その時には山岡は最後の名ゼリフを言うんだろうか―――? ファブル自身が寓話の通りに成敗される―――?
武器商人とオクトパス社長は兄弟か親戚ーーー
ボスは最初、漁師みたいな風貌で3枚目っぽい感じで、ペットを飼えとかふざけた指令を言ってくるので、お笑い主体のたまにシリアスな話なのかと思ったが、どんどんシリアスに面白くなってゆくのがビッグサプライズであった。
色んな殺し屋が出てくるに及んで、主役の佐藤は純朴な優しい好青年の印象がましてくるわけだが、もしかしたら、最初から登場している「ジャッカル」というのは、非人間的な仕事による人間崩壊を防ぐためのトラウマ除去の催眠術の役割をしているのではなかろうか。ボス自身がジャッカルの絵を送っているので、何か細工が含まれているような気がする。
猫舌も実はシリアスな裏があったので、あの執拗にでてくるジャッカルは裏があるのは間違いないと思われる。