双亡亭内で残花班と戦闘になった青一は人を攻撃出来ずに防戦一方だった。
そこへ黃ノ下残花が現れ青一を助けるが、残花班を追い払ったところで倒れてしまう。
一方、紅は双亡亭内で出会った帰黒と緑郎と合流すべく行動を共にしていた。
あらすじ
紅と帰黒
双亡亭内で緑郎のところへ向かう紅と帰黒。
帰黒「古い文献にありました…」
寿永元年 春、星ぞ 降りにける。
東の空 真紅に燃えぬ。
上下 殊に驚き恐るる。
甚だ 不吉なりと。
降りにし沼こそ沸き返りにけれ-
藤原貞義「星月記」
紅「じゃ… その『星』が降ったという所が… 今、<双亡亭>が建つ…この場所なのですか?」
帰黒「はい…平安の頃からずっと この辺りは沼地で…江戸時代に大規模な埋め立てが始まり、村ができていったらしいのです。ですが、埋め立て後にも、ここには人が寄りつかなかったそうです。生きて動く者は全て…この地を避けたのだとか… それが震災後間もない大正十四年、ここをある大金持ちが買ったのです… 先の一次大戦の紡績業の隆盛によって財を築いた『坂巻家』の跡取りです。」
紅「坂巻泥努…」
帰黒「はい… 泥努はまず広大な土地の中心に自分の居宅を作ったのです。当時にしても莫大なお金をかけて…奇妙な形の屋敷を…そして土地のギリギリまで塀を巡らせ、全ての職人達を締め出してしまったとか…ですが今もここからはげんのうの響きや鋸の音が昼夜絶えないという噂でした…」
紅「そんな双亡亭の噂…聞いたことないですけど… それに私達は外の門からすぐの所にあった母屋から入ったのですよ」
帰黒「え…? 私と同行の方は、<双亡亭>の門から、しばらく何もない庭の中を歩いてから、母屋に忍び込んだのですよ… 紅様の入った<双亡亭>と私達の入った<双亡亭>は様子が違うのですね… 味わってみれば、その違いがわかるかも知れませんが…」
帰黒「少し時間もたちましたから、確認してみましょう… お見苦しいところを…お目にかけます…」
帰黒は舌を出し、周りの空気を舐めるように回転する。
帰黒「判りました… 緑郎様はこちら一町ほどの広い和室… 私の同行者は、そちらの通路 一町と二〇間ほどの距離にいます」
紅「え…今のでそんなコトが…?」
帰黒「…恥ずかしながら、私は空を舐めて、その『味』によって様々な事象を知ることができるのです。」
紅「味で!? そんな霊能力…初めて聞きました…」
帰黒「参りましょう…」
紅「でも同行のヒトもあなたのその力を必要としているのじゃ…」
帰黒「大丈夫でしょう…あの方はお強うございます。なにせ、帝国陸軍 東京憲兵隊の隊長…少尉様でありますから…」
青一と黃ノ下残花
目を覚ました残花は手がドリルに変化させた青一の姿を見ていたため、青一も双亡亭に取り憑かれた化物だと思い込み、青一を退治しようとする。
逃げつつ、手のドリルから出る水を残花の顔にかける青一。
水をかぶった残花「まさかそんな事が… 貴様は45年前…別の世界に行っただと… そこで水の体をした者を会い…こっちに戻ってきたというのか…そして別の水の体を持つ侵略者がこの<双亡亭>を通路に使ってこの帝都を侵略しようとしている…だと?」
残花「己は…貴様の過去を今の一瞬で体験したようだが…わからん! 貴様達が乗っていたあの巨大な物(旅客機の事)はなんだ? 貴様の周りの見たことのない格好の者達はなんだ!? 貴様がバケモノでないとしても…信用できるか! 戦って倒してやる。どうした!? 手を変じて戦え!」
残花に刀を突きつけられても抵抗しない青一「ダッテ…ホータイサン…ニンゲンダモン… カラダノナカ ハイッテ ボクニ カエッテキタ ミズ… オシエテクレタ… ホータイサン、カラダノヒョウメンガ ナインデショ… ダカラ タイリョクナクテ…ナガク タタカウト スゴク ツカレルンデショ?」
残花「貴様のような奴に情けをかけられるだと…」
刀を鞘に戻す残花「ちっ! 先刻 貴様の過去を見た時…貴様が双亡亭を憎んでいるのがわかった…それは己も同じだ…」
青一「ホータイサン モ…?」
残花「己は…この屋敷に部下達を不用意に踏み込ませて全員を失った…己の体もな… そして…その時、己は確かに出会ったのだ。」
残花「己は、奴は会うまでは知らなかった…このおぞましい屋敷を建てたのが…昔から親しんだ… 幼馴染だったという事を!」
感想
新しい事実が出てきて、さらに双亡亭の不気味さ、異常さが際立った。
双亡亭の歴史を知るべし
寿永元年は西暦でいうと1182年。侵略者は遥か昔に地球に来ていたのか。まぁ、人間より遥かに長寿の侵略者やアノヒトにとってはそんなに昔ではないんだろうけど。
それから泥努が双亡亭を建設するまで(1925年から10年かけて建設された)誰もその土地を利用するどころか近寄りもしなかったのか。泥努がそんな土地を選んだのか?選ばされたのか?何かに惹かれたのか? 泥努の絵に対する情熱を侵略者が利用していそう。
帰黒と黃ノ下残花のいた時代を知るべし
帰黒は現代の人間では無いのか? 黃ノ下残花も?
双亡亭を建てた時の事を話している時に「当時にしても莫大なお金をかけて…」と言っているから、建設していた1925~1935年から貨幣価値が変わる程度の時代経過はあるということ? でも帝国陸軍が存在したのが1945年までなんだよなぁ… まぁ軍が解体されて、以前は少尉だったってことを帰黒は言っているかもしれないし、残花が最初に双亡亭に入ってから時間が立っているのかもしれない。
あと、帰黒が一町とか20間とかの単位を使っているから現代の人ではない事は確定だろう。双亡亭内で時空が歪んでいるのか? 侵略者の通路では時空の流れが乱れていたから、侵略者の更衣室である双亡亭も時空が歪んでいても不思議ではない。
新キャラの能力も知るべし
青一のドリルから出る水は、話が早くなって便利だなぁ。
それで青一が知った「残花は表面が無い」って…皮膚が無いのか? それで汗腺が無くなって汗をかいて体温を下げることが出来なくて、戦えばすぐに体温上昇して倒れてしまうのか?
残花が絵を描いている泥努と会ったということは、残花は肖像画に吸い込まれたという事。残花も凧葉のように過去のトラウマを乗り越えられたのか? その過程で皮膚にダメージを受けた? そして治療するために双亡亭を出て、ホータイサンになって帰黒を連れて双亡亭に再び入ってきたんだろう。最初に入った時の事を「不用意に入った」と言っているが、幼馴染の泥努が建てたから私情を挟んで隊を引き連れて入ったのかと思っていたら、泥努が双亡亭を建てた事を知らなかった…じゃあ別の理由でやむを得なく入ったのか。理由はなんだろう? 双亡亭の奇っ怪なモノを軍に利用しようと入ったというのが考えられるけど…
過去の黃ノ下と泥努の会話と、現在の凧葉と泥努の会話。これでまた謎が明らかになるかな? これは楽しみ。
後は帰黒の能力、空気を舐めて周りの状況を把握できる能力。そしてアウグスト博士達を窒素爆発から守った繭状になった髪の毛の能力も気になる。霊能力じゃないと言ってたけど、じゃあなんの能力なんだ?
そして青一がする独特の呼び方
緑郎を「ラクロー」に続き、残花のことを「ホータイサン」が加わった。
青一、人の名前を覚えるべし!