双亡亭内で黃ノ下残花と出会った青一。
青一は白い水を使い、自分が化け物ではなく過去にアノヒトから能力をもらったことを説明した。
そして残花も自分の過去を語りだす…
あらすじ
黃ノ下残花「話しておかないとな… 貴様が己に見せた貴様の『過去』が… 己は自分の辛いモノを見せねばならなかった貴様に… 同じく自分の事を話さねばならん… 貴様が化生であろうとも公平でなくてはいけない…」
青一「ボク オバケ ジャナイヨ… デモ ソレナラ…イイコト アルヨ。ホータイサンハ ボクニ ツタエタイコト、オモウダケデ イイノ…」
残花「なんだと? 思うぞ 良いか?」
青一「ウン。『テレパシー』デ、ボクガ ミルヨ!」
残花が双亡亭に乗り込んだ時の様子
双亡亭に乗り込んだ時の事を思い浮かべる残花。
犬養毅首相が官邸で発泡され、重篤な状況に。
官邸の女中や警官が、犯人が将校と士官候補生であることを証言。
軍事クーデターの可能性もあり、黃ノ下残花少尉が率いる『帝国陸軍 東京憲兵隊 沼半井小隊 第四分隊』が呼び出された。
不審な軍人ら数名がある家に逃げ込むのを目撃した情報を得た残花班は、その建物に向かう。
建物の門の前まで来た残花班。
残花「ここに逃げ込んだというのだな? 井郷准尉」
井郷「は! 現在建設中の屋敷だとか。紡績会社の社長の息子、坂巻という自称画家の家屋だという事であります!」
残花「坂巻…?」
井郷「隊長、何か…?」
残花「なんでもない」
己はそこで… 「侵入せよ」の手を…振らなければ良かったのだ。そうすれば勤勉で有能な部下を失う事はなかった… しかし己は彼らを<双亡亭>に進ませてしまった。
広い庭を抜け、奇妙な形の母屋… そして中へ。
どこか奇異な廊下だった…
進むうち己は急に気づいた。
部下達が誰一人ついて来ていない!
振り返る残花「貴様ら 何をしているか!? どうした…」
部下達は一人一人 廊下にかけられた絵の前に立って動かなかった。
部下達の様子に戸惑う残花「貴様ら 一体何を…」
シュッ
物音がしてそちらを見る残花「誰か!?」
音は絵描きが筆を動かす音だった。
絵描き「人の家に入り込んで、「誰か」か… 私こそ同じ事を尋ねたいが… 残念ながらそんなことは全て私には…わかってしまう。そしてその全部をこうして絵に描いてしまうのだ…」
残花「絵を描く? では…お前はこの屋敷の主人か… 確か名は…坂巻…」
絵描き「坂巻泥努…」
残花「あ… 坂巻… 絵描きと聞いてまさかとは思っていたが… 君は昔、自分と岡山の絹笠上級小学校まで一緒だった、坂巻由太郎君ではないか!」
泥努「……さあ… 私はそんな名前だったかな…」
残花「自分は残花だ! 黃ノ下残花! ほら神社下のレンゲ畑でよく相撲を取っただろう?」
泥努は思い出せない様子。
残花「忘れたのか! でもそんな事は今はいい! 君の屋敷に首相を撃った賊が逃げ込んだようだ! 誰か不審者を見ていないか!? 己は憲兵として、そいつらを逮捕せねばならないのだ!」
泥努「首相が撃たれた? そりゃいい… だって…私の絵を一枚も見てくれていないヒトだろう… 私に帝都一番の絵描きとして勲章でもくれたら良かったのにな… それとも下手な画家を死刑にする法律を作ってくれれば良い…」
残花(坂巻… もう10年も会ってはいなかったが… こいつはこんな目をした奴だったか… こんな風にしゃべる奴だったか…)「とにかく、この屋敷を捜索させてもらうぞ」
泥努「ソウサク…? 創作はイイモノだ… さ…できたぞ…」
描いていた絵を見せる泥努「お前の肖像だ」
残花「な…!!」
廊下で肖像画を見ていた残花の部下達が絵から出てきた腕に掴まれる。
残花「な…なんだ!?」
泥努「お前も行ってき給えよ…残花君」
泥努の持っていた残花の肖像画から無数の腕が飛び出す。
無数の腕が迫ってきた残花「うおおおお!?」
感想
残花、過去を思い浮かべるべし
泥努は青一に過去を見せてもらったから、自分もわざわざ過去を語るとは糞真面目だな。
そして青一は「わざわざ過去を喋らなくても思うだけでテレパシーで受け取れるから大丈夫。」と、白い水で青一の過去を一瞬で伝えられるのも便利だったが、相手の言いたい過去も見れるとか便利だな。読者にとっても話が早くて助かる。
ホータイサンは包帯巻く前は男前だなぁ。
残花班が双亡亭に入った事情は、5・15事件の犯人を追うために双亡亭に入ったのか。ということは残花が最初に双亡亭に入ったのは1932年。泥努が首相のことを「絵を見てくれないヒト」と言っていたが、この時から首相に肖像画を送っていたのか?と調べてみたら最初に首相に絵が送られたのは1935年でこの後だった。5・15事件を起こした将校達は双亡亭に操られたとかもあるのか? 暴力が駄目なら、絵を送って取り付いて操ろうと方針を変更したのかも。
残花は「泥努に会った」と言っていたが、絵の中で会ったのかと思ったら絵の外で会っていた。肖像画に飲み込まれてないのか? 肖像画から出て来る腕は紅の小太刀で斬れたから、残花もここから腕を回避できるか? 残花なら腕に捕まって肖像画の中で過去のトラウマを見せられても、心は折れずに跳ね返しそうだけど。
でも包帯を巻くことになったから絵の中での過去のトラウマで皮膚がヤラれたってことか? それとも双亡亭から逃げ出る時にヤラれた? とにかく残花は、ここから一回双亡亭の外に出て手当を受けて全身を包帯に巻かれたのは間違いない。双亡亭に再び入るのに一人では心許ないから、不思議な力を使う帰黒に協力を頼んで再突入したって流れかな?
泥努、正体を明らかにすべし
坂巻泥努の幼少の頃の名前は坂巻由太郎。
ということは、泥努=まことではないのか? 泥努は絵を描く過程で残花の過去も見ただろうけど、子供の頃に一緒に遊んだ事も見たんだろうにそれに反応しなかった。残花が取り憑かれた部下を見て「双亡亭内で出会った泥努と同じ笑い方をする」と言ったから、泥努が変わったのは「まことと入れ替わった」からというわけではないし。残花と出会う前にまことが泥努(由太郎)になっていたら別だけど。
泥努は侵略者に取り憑かれていて”白い水の種族”のアノヒトのように人の心を読めるようになって、そして読んだ中から過去のトラウマ見せる絵を描く。それが診断? でも診察して泥努はどうしたいんだろ?
泥努、目的を言うべし!