陰陽トーナメント
1回戦第3試合
入江文学 対 櫻井裕章
勝敗は入江文学の勝利だった。櫻井は最後の最後まで1回も間違えなかった。技も――― 読みも―――文学より一枚上だった。その櫻井がなぜ負けた?
ネタバレしたくない人は見ないでって言っても記事のタイトルで分かるか…
まだ読んでいなくて知りたくない結果を知ってしまった人は、棒を持ってライオンと戦って健忘症になって下さい。
ほら… 櫻井裕章とか忘れそうじゃないですか… 本当に困ったもんですなぁー 忘れるのだけは勘弁して下さいよ 櫻井のシラットを
まずは櫻井の戦い方。記憶が無い櫻井は”後の先”で戦う。
“後の先”、選択肢の中から素早く最善手を見つける事ができる能力。その最善手を出せるように多くの技を知っている必要があるが、櫻井は数多くのシラットの技を持っている。
ヨシフ「櫻井は攻撃の仕方を思い出せないだけだ。条件反射、センスだけで戦っている」
櫻井は健忘症だから経験を活かして自分から動くことができない。攻撃を仕掛けられて条件反射で出てくる技の中から最善手を出す。
櫻井は自分から攻める技”龍の構え”からの攻撃を持ってはいる。が、これも構えて相手に近寄っていき、相手の動きを見て上げた右を手刀としておとすか、それ以外の行動をとるかという受動的な動き。
櫻井は文学にイヤーカップをヤラれたが、その後チェーンパンチからの猿臂で文学をダウンさせた。この後、櫻井は追い打ちをかけず、鼓膜が破れたことによって自分の平衡感覚が狂っていないかをチェックをしていた。
これは櫻井が慎重に行動したほうが勝てる確率が高いと判断している事を表している。
健忘症の櫻井は、相手から仕掛けられて条件反射から出た技の中から最善を考える。そしてベターな選択をとる戦い方をする。
櫻井「俺のやっているベターな戦い方とは違う!」
文学「もう面倒くせーから さっさとお前の最善手を教えろよ!!!」
櫻井「…最善手 …思い出せない」
文学「でしょうね!!!」
櫻井が文学との試合でとった最善手は?
竜虎で対峙した時、手刀をガードされた後、咬もガードされても振り切って左鉤突きを防ぐという選択。
文学の腕を折った時、櫻井は離れて距離をとっている。これは櫻井が「文学のことを忘れたくねーよ」と言ったように再起不能にするのは勿体無いという敬意もあっただろう。が、追撃して無駄なダメージを負いたくない、仕切り直しになっても骨折している相手なら勝てるという選択。アンダーグラウンドと違い審判がいる試合だから棄権またはタオル投入で試合が終わる場合もあるという考えもある。
2度目に竜虎で対峙した際にフェイントを入れられて一撃を封じられた時、手刀をおろさず相手のガードを封じて下からの咬で攻撃を選択。
片手での煉獄を喰らった時、櫻井は”鋼の肉塊”でガード。肉塊を緩めて動いて脱出も可能だったが、筋肉の緊張が緩んだ隙が生まれる。その隙を考え、文学のダメージを考えて動かずに鋼の肉塊でガードを選択。
文学に持ち上げられた時、櫻井はこのまま投げられても首が固定されていないので受け身を取れる。グラウンドに移行しても文学は開放骨折しているから攻め手も限られている。だから対処できるという選択。
なんて空気が重いんだ 仲良くしようよ 誰が悪いわけでもない 櫻井自身は技の選択を誤らなかっただけなのだから
櫻井が最善の行動をとった結果…
哀しいのは…文学の骨を折った時、櫻井は追撃しない最善手をとったから、文学は骨を元の位置に戻せた事。
哀しいのは…文学の片手煉獄を受けている時、櫻井は鋼の肉塊をする最善手をとったから、文学に簡単に持ち上げられた事。(脱力している人間は手足どころか首、腰などもグラグラ動いて重心が定まらずに持ち上げにくい。体に力がはいっている状態だと一つの塊となって重心も安定して持ち上げやすい)
哀しいのは…櫻井が投げられる時、投げられても受け身をとれるという最善手をとったから、文学の投げを受けてその後睾丸を潰された事。
そして哀しいのは…文学に1個目を潰された後の肘金剛を櫻井がガードする最善手をとったから、2個目も潰された事…
人は櫻井の事を愚かと笑うかもしれない
だが最善手を選んで負けた者を笑う人などいるはずがない
もし腕を折った後に追撃していれば、片手の煉獄をガードせずに脱出していれば櫻井は勝てた。でもそれはベターな選択では無かったから櫻井は選ばなかった。
記憶が無いから周りを信用しない。そして慎重になるあまり、思い切った行動をとれずにベターな選択をしてしまう。
ヨシフ「相手が銃を持っていたらどうする? ”後の先”で勝てるのか?」。
アンダーグラウンドで勝ち進む櫻井。ハンディ戦になって相手が開始から銃”有り”だと櫻井の”後の先”では勝てるのか疑問を持つヨシフ。
後の先で戦った櫻井は、文学の奇策(文学が自ら耳を引きちぎり煉獄する奇策。櫻井は喰らったもののこれは凌げた。が、折れた腕から煉獄、急所攻撃を骨掛けで防いだかと思えば投げられて急所攻撃)という飛び道具にヤラれてしまった。
櫻井の敗因は健忘症だったということ。文学が櫻井に拮抗した強さを持った上で、奇策を繰り出せる発想を持っていて櫻井の予想を上回れたこと。
金的も目潰しも当然有った結果ですがそういう意味ではございませんよ
“有り有り”というのは櫻井には的確な読みが”有り”、最善手の技も”有り”という事でございます!!
“無し”というのはその結果、櫻井は”玉無し”という事でございます!!!