年が明けた太平市。
ミサキが会った痴漢を探すため動く洋子。その帰りに駅前で同じファブルの山岡を発見する。
二郎は暗殺計画を着々と進める。
クロはボクシングジムに通い出す。
あらすじ
洋子の家
佐藤を呼び出し、駅前で山岡を見たことを報告する洋子。
佐藤は組織の人間には興味がなく、ボスと洋子しか知らない。
洋子は10歳の頃にボスに引き取られた時に山岡と会っていた「ボスと対等に話していた――― 子供ながらにヤバイ奴ってすぐわかったわ」
佐藤「洋子があっちに気づく前から、あっちはおまえに気づいてる――― ボスに対等に物言える奴なんやろ? じゃあ間違いない――― おまえはとうに気づかれてる―――」
蛯原の家
洋子が組直したルガーを届けに来たクロ。
ボクシングジムに通いだして筋肉痛でフラフラのクロ「ただの運動不足解消ですよ・・・・」
銃を受け取った蛯原はクロに鍋をごちそうする「ヤクザやってるからこそ―――ちゃんと考えて生きれよ~」
二郎の家
暖房器具で暖めている落花生に霧吹きで液体を吹きかけている二郎。
横では洋子、田高田社長、ミサキ、真黒組の浜田組長、蛯原、クロ、砂川、武器商人のそれぞれ写真の他、佐藤明と書かれた紙が壁に貼られてあった。
その写真達を見て悩んでいる山岡「どう転べば盛り上がるのか~・・・・ 主役がいて、ヒロインもいて――― 命を懸けた戦いの末に涙する―――感動巨編にしたい―――」
二郎「まるで映画のプロデューサーだな―――・・・ じゃあ組長と若頭―――どっちを俺が殺るか教えてやろうか?」
山岡「それは言うな! それも込みで俺はワクワクしてる―――」
二郎「その一人だけ写真がないのは誰なんだ・・・・」
山岡「これな! 佐藤明――― コイツは主役じゃない――― ラスボスだ―――! だから俺もまだ顔を知らないままがいい―――」
山岡「妹役のヨウコをヒロインにするか~ あのガキがいい女になったもんだ~」
二郎「キャストの中に俺はいないのか?」
山岡「おまえは裏方―――・・・・黒子だよ!」
武器商人の写真を指す山岡「組長か若頭を殺ったのはコイツのせいにする――― そこからオープニングだ―――!」
二郎「何人死ぬ筋書きなんだ?」
山岡「だからそれを今から考える。全員死んだっていいし――― 一人や二人でもいい―――」
二郎「アンタそれだけの事するのに――― 自分の身の危険も考慮しといたほうがいいぞ!」
山岡「ちゃんと考えてるさ。死は量より質なんだよ――― なんなら俺が死んだっていい―――!」
物語を考え続ける山岡、寝てしまった二郎。
山岡「組長もいいが―――若頭が死ねばクロくんが盛り上がる・・・・ この二人は直属やからな~ 佐藤明とも繋がってる―――・・・・ さらにクロくんも死んでとなると・・・・ キャストが足らんような・・・・」
感想
ヒロインにしては強い女・・・・。
さすが記憶力のいい女―――。10歳の頃に一回会っただけで覚えてる!って思ったけど・・・・その時の様子が、ボスと対等に話している奴(これは山岡には恐怖心がないせいだろうけど)がいれば覚えているだろう―――。両親が亡くなって、別の大人に引き取られる時のことだから記憶力が”ふつう”だったとしても覚えているだろう―――。ただでさえ記憶力のいい女で、その上記憶に残るような時に顔を見せたんだから山岡も顔を覚えられていると思っているだろう―――。山岡が洋子に接近したのは、作りたい”映画”のために姿をわざと見せたのか―――?
酒が主食の女といえど、さすがに組織の人間の話をする時はシラフ―――。記憶力がいいから忘れたいことも忘れられないから酔おうとしているんだろうけど・・・・山岡の感動巨編が終わった後、忘れたいことが増えそう・・・・。その時に酒は役に立つだろうか・・・・。
ラスボスと指定された男・・・・。
洋子が「組織の人間を見た」ということを佐藤が信じた―――。洋子の記憶力、洞察力には佐藤の信頼してるんだな―――。組織の3つの心得に『誰だろうと油断するな。赤子だろうが疑え』とあるが、洋子は信用できるようになった―――? 少しづつ変わってるんだろうか―――?
組織の人間はボスと洋子しか知らない佐藤―――。興味がなくて、山に置き去りにする時の運転手の顔も見ていない―――。そんな佐藤がミサキを救いに行ったり(佐藤にとっては散歩と変わらないようだけど)―――ヒナコを庇ったり―――クロにプロを諦めさせるために手合わせしたり―――コマ回しや凧揚げを楽しんだ写真をミサキに送ったり―――バレンタインデーの事を説明したミサキに「誰かにチョコをあげた事は?」と聞いたり―――色々他人に興味を持ってきている―――。佐藤は変わってきたか~? いつもの風呂ではなくてベッドで寝ようとしていたのも”ふつう”に変わってきた兆しなんだろうか―――?
洋子やクロと手合わせした後に佐藤は「ナマッたな」という事を呟いたが、これは身体だけでなくて心も”ふつう”になってきている事を指している―――?
洋子と向かい合って座る佐藤―――。そういえば鈴木も洋子と向かい合って座ったが―――
腰を前にずらして座っている―――。洋子に「座ってても重心はブレてない?」と指摘され、案の定洋子にやられてしまった・・・・。
対して佐藤は―――
ちゃんと座っている―――。プロや―――。隙がない―――。ミサキに「ぼぉ~っと歩いてたんやろな」と偉そうに指摘できるだけある―――。
佐藤「洋子があっちに気づく前から、あっちはおまえに気づいてる――― ボスに対等に物言える奴なんやろ? じゃあ間違いない――― おまえはとうに気づかれてる―――」
佐藤に匹敵、または上回る?相手が出てきたか―――。佐藤は山岡に追い詰められたら焦った表情を見せたりするんだろうか―――? 「ナマッてる」事が心配だけど、今までの相手とは役者が違う山岡が相手なのは楽しみ~。
ラスボスが所属している組織・・・・。
ファブルは仕事を受ける人、計画を立てる人、実行する人、それぞれ別にして分業制をとっている―――。二郎はそれを一人でやっている―――。鈴木もそうだったし、プロとしてはそれがふつうか―――。ファブルは所属している人間だけでなく組織の構造もスペシャルなのか―――。
裏切ろうとしたり、組織を抜けようとすると消されるんだろう――――。ちゃんと機能すれば分業制は、上で動かす人間にとって完璧なシステムだな―――。
そんな組織の仕組みに文句を言わずに従っている佐藤―――。ボスを信頼しているというのもあるだろうが、成り上がってやろうという野心は無いみたいだな―――。物心ついた時からボスに殺しの技術を教え込まれていたから、それをする事しか思いつかなかったんだろう―――疑問も持たなかったんだろう―――。「仕事として何人殺そうが平気だが、快楽で殺った事は一回もない」と言った佐藤―――。佐藤の役は”ラスボス”ではなくて一人の”兵士”だな―――。
プロデューサーが消したがっている男・・・・。
蛯原「ヤクザやってるからこそちゃんと考えて生きれよ~」
ファブルのおかげで真黒組は太平市浅瀬町の唯一のヤクザになったから平和だとはいえ、ヤクザは死と隣り合わせだからいつ死んでもいいように生きろってわけか~? 蛯原は佐藤に「命は唯一平等で大切なもの。それを散歩しながら奪っていくようなヤツは町に置いておけない」と言っていた―――武闘派といわれる蛯原―――武闘派とはいえ、いや武闘派だからこそ命の大切さが身にしみているのか―――?
反対に命を軽く観ている山岡に、クロが盛り上がるために消したいと思われている―――。洋子が直したルガー、蛯原が将来受け継ぐ予定のルガーが役に立つ―――? それとも手遅れで、クロが敵討ちにそれ持って討ち入りなんてことに・・・・? 真黒組に受け継がれるルガーがバラバラから戻ったのに、山岡によって真黒組がバラバラになってしまうんだろうか・・・・。ルガーが身代わり役になって庇ったりしないだろうか・・・・?
プロデューサーとして対応する男・・・・。
山岡はプロデューサーとして動くのか―――。
山岡の構想している感動巨編のキャスト一覧―――
田高田社長が含まれてる・・・・今まで小島編ではキックの西日本チャンプに蹴られて・・・・貝沼が会社内で暴れて・・・・クリスマス会で洋子に酔い潰されて・・・・また不幸な目に会うのか・・・・? 引っ越しても運気は上がらずか―――? 社長は50歳で厄年ではないはずなのに・・・・。
砂川がキャストに入っている―――。砂川は「自分で動いて組を乗っ取ってファブルを動かす立場になる」とプロデューサー気分で考えているだろうが、実際はファブルに動かされる立場とは・・・・。山岡のほうが役者が一枚上というわけか―――。
武器商人もいるな―――。そして山岡が「組長か若頭を殺ったのはコイツのせいにする」とご指名―――。生き残った組長か若頭が武器商人を問い詰めて「砂川が計画した」と吐かせて、真黒組をぐちゃぐちゃにする筋書き―――? 武器商人が希望していた引退は無事に出来そうにないな―――。山岡の感動巨編に一役買ってポイっか・・・・。
二郎は暖房器具で暖めている落花生に霧吹きでシュッシュッと吹きかけてるけど、やっぱりカビを作ってるのか―――? おつまみの落花生のカビ毒でターゲットを消す―――?
山岡の感動巨編のキャストの中に二郎がいないとなっているが―――二郎は「引退を考えている」と山岡に言ってしまったし―――山岡の顔、組織の人間と知っているから二郎は消されるんではないか―――? 二郎が証拠を残さずにターゲットを消した後に、二郎自体も山岡が証拠を残さないために消される―――?
ハンモックで二郎は寝ていたが、二郎は寝ているんでは無くて「もしかして俺も消される?」と察して寝てるフリして山岡の独り言を盗み聞きしている―――? 二郎が起きてたら、山岡は呼吸のリズムなどで分かったりするんだろうか―――? 二郎はどこまでのプロなんだろう―――。山岡の役に立つほどだろうが、山岡より上は無いだろう―――。
山岡の筋書きは「若頭を消して直属の部下のクロを動かして話しを盛り上げる」って考えか―――。クロが若頭を消した武器商人のところに行ってオープニングって感じか―――。クロは喧嘩では強かっただろうけど、武器商人は仕事柄から襲撃に備えて武器を備えてそうだし、クロが乗り込んでいったら返り討ちにされそう―――。クロが消されて佐藤が動き出す―――ってシナリオを狙うのか―――?
最近のクロの出番の多さ―――組長や若頭が「クロがプロを目指している」事を心配している様子―――手合わせで佐藤にプロを諦めろと言わんばかりの気遣いをしてもらったり―――ボクシングジムへ通いだしたり―――クロにとって大きな試練がありそうな予感がする―――。役立たずで終わったら役不足(ここでは誤用のほうの力不足という意味)と感じてプロを諦めるだろうか―――?
直属といえば、佐藤明はボスの直属の部下―――巻き込むなっていう約束どころか消してしまったら山岡自身がどうなるか分からない―――。それも覚悟の上のこの”感動巨編”か―――?
山岡が今回を最後にすると決めていたとすると、今まで自分は映画の観客だったのが主役になってみたいと思うかもしれない―――。そしてラスボスをボスのお気に入りの佐藤としている―――。二郎に「ファブルを殺ってみるか?」とけしかけはしたが、佐藤には直接自分が殺りたいと思っているではないか―――? そして次に狙うターゲットは真のラスボスとしてファブルのボスを―――?
「死は量より質」と考えるなら「生きることは長さよりどう生きたか」と考えていてもおかしくない―――。恐怖心がない男―――恐怖心というブレーキが無い男がプロデューサーの立場で我慢できるだろうか―――?